#11「子は鎹」

いやはや、先週の私の予想(竜二はドラゴンソーダに戻る)、見事にはずれましたねえ。そうでもしないと、竜二の見せ場が少なすぎると思ったんですよ。「子は鎹」だから、普通に考えると師匠と虎児の間を竜二が取り持つんだろうけど、もしかして竜二の落語復活話が主になって、虎児が師匠と竜二の「鎹」になるのかも?とか思ったりして。でも竜二が突然落語に戻ろうとしたきっかけも、ドラゴンソーダへの思いも、メグミちゃんとの関係も、あやふやなまま終わっちゃいましたね。襲名披露も結局小虎に主役を奪われちゃってたし。でも見終わって、「竜二がないがしろ…」とは思わなかったな。岡田君の竜二、「やりたいと思ってる事を他人に言われると、ウザイんだよ。」ってとこなんか凄くいい味出してたし、「タイガー&ドラゴン」というタイトルからはちょっと離れちゃった気がするけど、これはこれで良かったと思う。ただやっぱり時間は足りなかったね。ところどころ説明不足になっちゃってる感はあった。でもまあ、細かいところで驚かされはしたけど、基本的には想像通り、期待通りの大団円でした。今回ばかりは、クドカン得意の「賛否両論、唖然とするラスト」じゃなくて良かったと思う。

なーんて冷静に語ってますけど、私、恥ずかしいほど号泣しながら見てました…。特に師匠が「小虎」と名乗って高座に上がってるところと、組長と喧嘩して、「三年前はそこに座ってたんだよ、何でいないの?」と泣くところ、あと虎児が刑務所の中で落語を勉強していたというところ、そして最後の「じれっタイガー!」…。あ、「特に」が多すぎるか。でもほんとにその辺は、声あげて泣いてしまったんだもの。それ以外のとこでも何度もウルウルしてたんですけどね。やっぱりクドカンドラマに悪人はいないって事で、力夫やヤスオ、ジャンプもいい人になっててなんか嬉しかったな。小しん師匠も、先週カンパくれたしね。クドカンはこういう正統派の人情話は苦手だと思っていたんだけど、「落語」っていう枷があったので、逆に照れ隠しになってちょうど良かったのかもね。私もIWGPの時は「浪花節はちょっと…」とか言ってたくせに、このドラマでは全く気にならなかった。最後の「じれっタイガー!」連呼も、長瀬君がキャスト、スタッフ、視聴者含めてコールアンドレスポンスしてるみたいで、なんか嬉しかったな。

ラストが近づいて、SPの時の設定が色々出てくると思ったら、最後の最後にナンとは。あれってほんと、SPの冒頭の部分でしたよね、出てきたの。「子供ってのはなんだな。」「おー、どうりでカレーがないと食えねえと思った。」「そっちのナンじゃねえよ。」というサゲ、途中でメグミが和食にナンを付け合わせちゃうシーンが、伏線としてうまく効いてました。「これはなんなの?」「ナンだよ。」というギャグを前もって一回やっておいたので、サゲがわかりやすかったというか。私みたいに全神経集中させて、何回も見返す人とかじゃないと、ああいうのって意味通じずに終わっちゃったりしそうだし(実際うちの母親がそうです)。そういう気配りも、今までのクドカンドラマとは違う点でしょうかね。

あと最終回は、時代劇の部分が妙に弥次喜多チックで、それも嬉しかった。あの橋!ワープステーション江戸だっけ?同じ場所だよね。長瀬君のちょんまげも喋り方もちょっと弥次さんっぽかったし、良々の涙の拭い方も、「魂」と一緒なんだもん。バスガイドパブに江戸時代の扮装で現れちゃう辺りも、弥次喜多の世界だわね。で、元の落語では亀に渡した五十銭で父親に会った事がバレるのですが、それが現代版ではレロックスになっていたり、再会する鰻屋がバスガイドパブになっていたりのアレンジも憎い。あと虎児がそば屋で「俺の事何か言ってなかったか?」って聞くのとか、喫茶店で竜二に「何だよ急に身乗り出して」って言われるのとかも、元の噺にある表現なんですよね?元ネタを知らないで見てると、恐らくそういうシーンは何気なく見過ごしてしまうんだろうけど、落語を知ってる人が見ると、もの凄く細かいところまでちゃんと再現されてて、何倍も楽しめるんでしょうね。やっぱり元ネタちゃんと勉強し直そうかなあ。

最終回の終わり方については満足なんですが、全体を通して見ると、回によっては「イマイチかなあ」と思う事もあったりして、「木更津」や「マンハッタン」ほどハマったとは言えないかも。でも当時はまだクドカン作品にもあまり慣れてなくて、新鮮だったってのもあると思うし、このドラマ始まった頃は、とにかく「弥次喜多」に夢中だったってのもあるし、今はまだ冷静に評価できないかなあ。しばらく経ってみて、やっとわかるのかもね。それでも一つだけ確かに言えるのは、今までのクドカン作品の中で、私は山崎虎児という男が一番のお気に入りだって事。弥次さんでも凄いと思ったけど、長瀬君更に巧くなってるよね。もし続編があるなら、後半悲しい虎児ばっかりだったんで、思い切りバカな小虎をたくさん見たいな。

*小ネタ編は後ほどアップします。