#2「この世で一番嫌いな人」

これ、好きです。初回見て「もっと増やせばいいのに」と思った部分(きめ細やかなセリフの応酬)と、「もっと少なくていいのに」と思った部分(つまらないギャグ)が、私の希望通りに調整されてる!まだまだ「すいか」の域には達しないものの、傑作の予感がしてきました。「すいか」の時はほんとにいいセリフが多くて、毎回レビューで書き出していたんですが、昨日も久々に「おっ」というセリフがいくつかありました。決して号泣というわけではないけど、しんみりとせつなくて、まったりしていて、とてもいい感じです。要の愛読書として「鬼平犯科帳」が出てきたのも、「すいか」を思い出しました(あれは「半七捕物帖」だけど)。藤尾(隆太君)には「罪と罰」なんて嘘ぶいていたけど、良く考えたら両方とも刑事モノ(?)なんだよね。要が自分の為に刑事を諦めたと思っている東子、っていう話に繋がってるんだな。

東子は以前はバリバリ働いていて、要が忙しくない交番勤務なのをいいことに、家事を全部押しつけていた。要の優しさに甘えきっていた。そして要は路留と出会い、プライドの高い東子は慰謝料も貰わず、自ら身を引いた。会社を辞めて店を開いたものの、経営は苦しいし、商店会長には迫られる。モテモテのキャリアウーマンだった東子が、下町のスケベオヤジと酔ってキスしてしまうほど、寂しかったのか。そして三年後、要が同じ街に越してきて、密かに小南の為に貯めていた金を渡すが、東子は受け取らない。商店会長は妻を恐れて、「俺は東子ちゃんみたいに、平気で離婚したりできないんだな。その点あなたは堂々と人を好きになり、堂々と離婚して凄いよ。」と一方的に終焉宣言。微妙に傷つく東子。そして彼女は商店会長から、要が再婚した事を聞いてしまう。「あなたのことなんて愛してなかった。全然、愛してなかった。思い違いしてたのよ。要ちゃんは何をしても、私に優しいはずだって。要ちゃんはどんな事したって、許してくれるって。そんな人いるはずないのに。人を好きになって、苦しそうな顔をしているあなたの顔なんて見ていたくなかったの。だから解放してやったのよ。私から解放してやったのに、何やってんのよ?そんな昔のまんま、苦しそうな顔して私の前にまた現れないでよ。刑事にでも何でもなってよ。出世してよ。幸せになってよ。」

具体的な離婚の理由はまだはっきりしてませんが、要と路留の関係に気づいた東子が、自分から別れを切り出したんでしょうね。この辺も最初から説明せず、小出しにしてるのがある種謎解きっぽくていいです。まあよくある略奪愛ってやつなのかもしれませんが、路留がほんとに非の打ち所がない女性で、かと行ってイヤミなわけでもなく、本当にかわいらしいんですよね。そして一番悪者であるはずの要も、東子や小南の事を本気で心配している事、路留の事も心から愛してる事が凄く伝わって、彼の苦しさも良くわかるので憎めない。宮沢りえ牧瀬里穂に思われる男が岸谷さん?って思ったけど、彼ならありえる、って思えるもん。そして意地っ張りな東子の、プライドを砕かれた悔しさと、失って初めて気づく要への愛情、そして過去の自分を悔やむ気持ち。そんな母親を、「三年前から失恋してる。」と見つめる小南の寂しさ。みんながみんな、苦しくてせつない。みんな少しずつ悪いけど、優しい。「東京ラブストーリー」みたいに、簡単に「さとみがむかつく!」とか「カンチが良くない!」とか言えないんだよね。

前回宮沢りえが中学生の母親に見えないって書いたんだけど、不思議なことに、だんだん36歳のバツイチに見えて来ました。ほんとに彼女は素晴らしいです。岸谷さんの受けの芝居もいい。アトリエのセットは、ちょっとレトロな感じでりえちゃんと雰囲気が合ってるし。あと高田純次の商店会長も、先週は単なるウザいスケベオヤジだったのに、要に「異動があるっていいね。俺なんか仕事も家庭もどっかりここに根を下ろしちゃってるから、動きようがないや。かみさんはもっと…。」なんてしんみり語るとこなんて良かったな。こんな役なら、もうちょっと上手い役者さんにやってもらいたかった気もするけど…いっその事内藤さんとかね。なんか盛り上がって長文になってしまいましたが、期待していた通り、私好みのドラマになりそうなんで、これからが楽しみです。