#5「離婚届が舞う夜」

実はこの夫婦、お互いまだ浮気ってほどの浮気をしてるわけじゃない。明之だって結局、初回で梓にキスされただけだもんね。でも「まだ寝てはいないから恋愛じゃない」っていう、都合のいい言い訳のせいで、こうやってズルズルと続いちゃうわけで。明之みたいな優柔不断なタイプには、さっさと深い関係になるよりも、「狡い友達でいましょう」ってじわじわ攻める方が有効なんだろうな。梓、あんたすげえよやっぱ。で、中途半端な浮気だからこそ、中途半端に罪悪感があって、お互い変に隠し事ができて、ぎくしゃくして来る。朝食のシーンといい、人生ゲームのシーンといい、「さあ、相手はどのカードを出してくるか?」みたいな夫婦の心理攻防戦がもう、ドキドキハラハラでむちゃくちゃ面白い。それが本気で憎み合ってるとかじゃなく、相手に嫌われたくないからこそっていうのが、昼ドラ的なドロドロものとはちょっと違って、上品で良いです。

前半からちょこちょこと出てくる、釣り堀、離婚届、人生ゲーム、ガラスの破片、なんて伏線アイテムが、後半になって一気に生かされて怒濤の展開に。もう毎回毎回、脚本の完成度の高さには舌を巻きますね。明之の嘘が何回も友にバレそうになって、そのたび危機を脱して、そしたら逆に友の嘘がバレるんだけど、なんとか仲直りして一件落着、と思ったら最後にどんでん返し!ですよ。梓に弄ばれる明之と同じように、私も龍居さんに翻弄されっぱなし。あと人生ゲームのとこ、もの凄い長回しのワンカットでしたよね?あんなにセリフが多いのに(しかも蔵之介や羽田さんのツッコミのタイミングとか難しそう)、これは演出家が役者を信頼してないと出来ないよなあ。上手い人が揃ってるってのもあるし、こういうとこも舞台っぽいのかも。

梓の小悪魔っぷりはほんとに見事なんだけども、同性でありながら、不思議と見ててむかついたりはしないんだよね。恐らく私が明之に感情移入しちゃってるからだと思う。「うわ、ほんとにそんな目されたらたまんないよ!」とか、もろオッサン目線ですわ。今回はかなり明之が梓に傾いちゃって、ちょっと印象が悪くなった分、了の魅力が随分クローズアップされてたんじゃないかな。やっぱ女って、「いつもはワルなアイツが、私の前だけでは素直なの…」(ツンデレってやつかい?)に弱いからねえ。特に友のような母性本能の塊みたいな人は、明之に不信感がある今、「自分だけを頼ってくれる」了にほだされちゃうかもよ。そして友の事を陰ながら見つめ続けてる俊介も、いつ明之に反旗を翻すか楽しみですねー。ブラ蔵発動なるか?