古畑任三郎ファイナル#3「ラストダンス」

古畑任三郎FINAL DVD-BOX

古畑任三郎FINAL DVD-BOX

さて、いよいよ古畑シリーズの最終作です。犯人役は松嶋菜々子。最初にこのキャストを聞いた時は、正直、ちょっとガッカリしたわけですよ。最後はもっと上手い人にして欲しかったよと。ところがねえ、昨日の菜々子、これが良かった!私、彼女の事こんなにいいと思ったの初めてです。出産して変わった?と言っても、「救命病棟」の時はアレだったしなあ。凄くしっとりとした大人の色気もあったし、田村さんと対等に張り合える風格みたいなものも感じた。まあ、元々かえで(妹)みたいな「偉そうな女」はハマるんだよね、彼女。でも地味なもみじ(姉)がなかなか新鮮で、この姉妹の演じ分けが楽しかった。二人で同じ部屋で喋ってるとこ、もちろん合成も凄いんだけど、恐らく片方を先に撮影して、そのVTRに合わせて演技してるわけでしょ?その会話の間とか、視線の配り方とか、体の動きとか、あまりの自然さに、一人二役って事途中まで忘れてたもん。あのシーンは見事だったと思う。はい、じゃこっから畳みます。
 

 
とまあ、菜々子に関しては「嬉しい誤算」だったんだけど、ストーリーはちょっとひねりがなさすぎたかなあ。双子って時点で、入れ替わるんだなってわかっちゃってたんで、最初から「いつの時点で替わるんだろう」って視点で見ちゃってたから、かえでがいちいちワイングラスの縁を拭くのも、ダンスも、コートに気づかないのも、マンションのセキュリティも、人形も、ほとんど気づいちゃって。意外性がなさすぎて、ちょっとガッカリ。いや、最初は最終話の犯人が脚本家だと聞いて、「古畑任三郎は加賀美京子の創作した架空の人物でした」みたいな、とんでもない話になっちゃうんじゃないか?とまで思ってたんですよ。でもまあ、三谷さんは大人でしたね…。「登場人物のセリフを借りた脚本家の愚痴」も、心配してたほどクドくなかったし。一つだけわからなかったのは、水槽の鏡。でもなあ、これも、いかにも男性の考えた話だよなあって。姿見にはできても、あれで化粧は無理だべ。殺人後のかえで(ほんとはもみじ)がヤケに化粧が濃かったんで、あんな鏡でやるからそうなったのか?と思ったら、それは単に慣れてないから、って事みたいだったし。

一応第一話の明菜の話が出てきたりとか、ラストっぽいとこもあったんだけど、思ったよりさらっと終わっちゃいましたね。なんだかまだまだ続編もできそうな感じに。私自身、今回の三作は結構楽しめたんですよ。でも多分第三シリーズはほとんど見てなかったり、古畑自体久しぶりだったせいもあるんだろうなあ。三谷さん自身ミステリ専門作家ではないし、普通のドラマでさえワケのわからない規制がたくさんある今、毎回殺人事件を書かなきゃいけないっていうのが、どれほど大変か。今ドラマで使える凶器って、ほんと限られてるらしいですからね。かえでの事件だって、今の科学捜査だったら、一発で自殺か他殺かなんてわかっちゃうはずだしね、本当は。ぱっと視聴率取って、いい印象のまま終わった方がいいんじゃないかな。三谷さん、最新エッセイのあとがきで、「代表作と言われるものは皆十年以上前のものばかりで、ここ数年は全く結果を出せていない」と自覚しているようだし、いつまでも古畑に囚われてるのは気の毒かなと。田村さんもいつまでも若い役ばっかりやってないで、石坂さんみたいに老け役に転向してもいいんじゃないかなあ。