「THE 有頂天ホテル」

THE 有頂天ホテル スタンダード・エディション [DVD]

THE 有頂天ホテル スタンダード・エディション [DVD]

そこまで張り切るつもりじゃなかったのに、成り行きで初日に見る事に。いつも空いてるシネコンなのでナメてたら、開演一時間半前で残りは最前列のみとな!仕方なくはじっこの最前列で見ましたよ。女優さん達の足がやたら細く感じて、「こんな斜めから見てるせいだ!」と思ったんだけど、よく考えたら慎吾は普通に太く見えてたよ…。びっしり埋まった客席は老若男女かなりばらけてて、上映中もおばちゃんを筆頭に笑い声が絶えませんでした。エンドロールが終わるまで誰一人立ち上がらず、拍手こそ起きなかったものの、皆とても満足げ。これはクチコミ動員とかリピーターも多そうだし、かなり行くんじゃないかなあ。私も自信を持ってオススメします。「どうしても三谷作品は合わない」という人以外、きっと楽しめるはず。「みんなのいえ」はイマイチだったけど、これは大好きな「ラヂオの時間」も超えましたね、私の中では。

一言で言ってしまえば「ドタバタコメディ」なんだけど、今回舞台がホテルっていうせいもあってか、とてもおしゃれで洗練された作品になってます。「純愛」「死」「エログロ」「特撮・CG」とかの飛び道具は使わず、脚本の面白さで勝負!っていうプライドの高さが、三谷作品の品の良さに繋がってるんだろうなあ。主なキャストだけで二十人強、しかも主役級のスターばかりという布陣で、予告編を見た時には「これは散漫になるだけじゃないかー?」と危惧していたんですが、全くの杞憂でしたね。人数が多い分一人一人の話が薄くなるんじゃなく、「×人数」で何十倍にも濃くなってるんですよ。私が一番凄いなーと思ったのは、このキャスト全員の見せ方のバランスですね。誰かが出過ぎる事もなく、目立たず損する事もなく、均等に見せ場があるの。その役者がどうしたら一番魅力的に見えるかっていうのを、熟知し尽くしてるこの脚本ったら!三谷さんのキャスト全員への、深い愛情を感じました。ストーリーはほんとに三谷作品の集大成といった感じで、お得意の「最初についた小さな嘘がどんどん取り返しのつかない事に…」っていうパターンがいくつも組合わさって行くもの。「新選組!」ファンにはたまらない小ネタもいくつかありますよ。大爆笑!とか、号泣!って感じではないけども、ラストは胸がじーんとして、気付いたら笑いながら涙が出てるような、そんな素敵な映画です。

それではキャスト一人ずつに触れて行こうかな。こっからは超ネタバレなので、見る前には絶対読まないで下さいね。
 






役所広司<申し分のない副支配人(宿泊部長)>…「申し分のない」と言いつつ、結構抜けてる人。役所さんは「真面目ゆえおかしい」ってのが似合いますねー。歌や字が下手なのがカワイイ。鹿のスピーチと、「作戦募集!」「これから考えるのかよ!」ってのが笑った。昔の奥さんに見栄張って…ってのは、「王様のレストラン」にまんま同じ話がありましたね。

松たか子<議員の元愛人、今は客室係>…舞台も映画も見てないので、かなり久しぶりだったんですが、堂々たる演技派女優に成長されてたんですねえ。いきなりカタコト日本語になるとこは爆笑。そして武藤田にがーっと説教しまくるとこは、凄い迫力でした。制服も短いソックスも、とても似合ってた。

佐藤浩市<人生崖っぷちの汚職国会議員>…ワガママで見栄っぱりで人の意見に流されやすい嫌な奴。なのになんでこんなにセクシーでかわいいのー!明らかに芹沢鴨をベースとした役ですよね。三谷さん、佐藤さんの事好きなんだろうなあ。おすすめ料理が「鴨」だったり、近藤さんに抱きついたり、新見さんとの奇跡のツーショットがあったり、組!ファンへのサービスもたっぷり。この人、終始何か食べてるのも面白かった。「帰りは遅くなる。」ってカッコイイ!

香取慎吾<歌を愛するベルボーイ>…大河のすぐ後に撮影されたらしく、三谷さん曰く「脱・近藤の為のリハビリ」だとか。いい感じに力が抜けてて、私はこの慎吾すごく好きだわー。突飛な役より、こういう普通の優しい男の子役の方が、案外ハマるんじゃないの?「天国うまれ」のギターと歌も、とても良かった。

篠原涼子<神出鬼没のコールガール>…彼女と鈴木京香は、三谷さんにとって「二大お色気女優」なんだろうな。こういう役はお手のもの。毛皮を脱いだ時のおっぱいは見事です。そういやYOUとは「ごっつええ感じ」仲間だね。

オダギリジョー<筆の達人筆耕係>…んー…、正直、なんであんなヅラをかぶせたのか良くわからないのですが…。そのままだと二枚目すぎて、他の役者さんが霞んじゃうから?でも充分地味な雰囲気出てましたよ。垂れ幕書く時、膝で立ってつつつ…と移動してたのがめちゃくちゃかわいい!

麻生久美子<憲二の幼馴染で謎のフライトアテンダント>…ストーリー的には、彼女の正体が一番「おお!」って思ったとこかな。「なおちゃん」なんだから、もっと早く気付いても良かったのに私ったら。スチュワーデスの制服がかわいかった。でも背中を安全ピンで留めたくらいで、前から見てあんなに綺麗なラインにはならないと思うぞ。

YOU<不幸せなシンガー>…かなりの儲け役。彼女が歌う「If My Friends Could See Me Now」の歌詞(エンドロールで出てくる)が、要はこの映画のテーマなんですよね。ドレス姿は痩せすぎててちょっと痛々しかったけど、歌い出したらあまりに魅力的なんでびっくり。フェアチャイルドは知っていたけど、ジャズ(?)も上手いんだねー。それ以外のシーンでは、伊東四朗との絡みがいい味出してました。

生瀬勝久<副支配人(料飲部長)>…姑息で卑怯な、典型的な敵キャラ。後半あまり活躍の場がなくて残念ですが、きっちり笑わせてくれます。

戸田恵子<アシスタントマネージャー>…この映画は彼女なしでは成り立たないよね。三谷さんの信頼の厚さが伺えます。文字通り助演女優賞!いい仕事してるよなー。しかも新堂さんに惚の字って役のせいか、やけに綺麗で色っぽく見えたわ。

角野卓造<マン・オブ・ザ・イヤー受賞者>…ひどい役だよねー。ホテルに着いた時、やたら何回も「スイートじゃないのか」って言ってたのがおかしかった。ケチなんだよね。携帯折るとこはほんっとにバカ!最高でした。

浅野和之<武藤田の秘書>…いきなりキレるとこが見せ場ですね。最終的にはかなりおいしい役?ヨーコともいい雰囲気になっちゃって。

近藤芳正<板東の息子>…あの耳は一体…。なぜか携帯をイヤホンとマイクで通話してるのもいいなあ。三谷さんてこういうとここだわるよね。

寺島進<スパニッシュマジシャン>…「スパニッシュ」という響きにもの凄く期待してたのに、ずっとつんつるてんのジャージだったよー。もう一回見直したら、結構細かい芝居とかしてそうだなあ。

川平慈英<ウェイター>…いつもの暑苦しいキャラ。

堀内敬子<客室係>…主要キャストで唯一知らなかった方です。舞台系の役者さんて濃いイメージがあるけど、この方はほわんとしててかわいかった。松さんより随分年上なのね。びっくり。

梶原善<徳川の付き人>…胡散臭すぎる!!怪しすぎる!!何なんでしょうこのキャラは。徳川先生を自在に操ってますよ。モンゴルのオイルって一体…?

石井正則<ホテル探偵>…ほんとにいるんですかね?そんな人。まるっきり西園寺君ですな。

原田美枝子<新堂の別れた妻>…今回の主要キャストでは、唯一三谷作品初出演なのかな。一番まともな人で、凄いおいしいシーンとかはなかったかもしれないけど、最後に舞台の美術をやってたっていうのを生かして、垂れ幕に絵を描き足してるとこを入れたのは、三谷さんの愛情かな。戸田さん同様、とても綺麗に映ってました。

唐沢寿明<芸能プロ社長>…一・九分けにダブルのスーツ。もう、嬉々としてやってんだろうなーこれ。最終的には寺島さんの奥さんの代役まで務めようとしてるし。

津川雅彦<事故に遭った大富豪>…出番はほとんどなかったですね。でも電話の声だけで津川さんてわかっちゃう。お父さんも耳大きかったですよね?

伊東四朗<能天気な総支配人>…セリフの量の割に、かなり場内の笑いを取っていたお方。やっぱり元コメディアンだよなあ。伊東さんと角野さんはほんと散々な役だよね。おいしいけど。

西田敏行<死にたがる演歌歌手>…どこからが脚本通りで、どこからがアドリブなのか。裸は卑怯だよなー。もう、西田さんが出てくるだけで、おばちゃん達笑ってるんだもん。ところで徳川先生が記者会見に出てくれたのは、憲二に免じてって事なんだよね?その辺、何かエピソードがカットされてるような気がしないでもない。

その他にもカメオ出演の人がいっぱい!冒頭のココリコ田中&八木亜希子は、全く気づいてなかったです。「みんなのいえ」の夫婦として出てたんだよね。「新選組!」関連の人も色々出てたみたい。また行ってじっくり探さなきゃ。

よくよく考えると、ラストは特別ハッピーエンド!ってわけでもないんだよね。丹下とむっちゃんのカップルぐらい?後の人達は、結局今までと同じ日々が続くだけ。ただ大晦日のこの騒ぎの中で、ほんの少し前向きになれたり、自分の気持ちに正直になれたっていう。だから「大団円!」みたいなのを期待してた人は、ちょっと盛り上がりに欠けるなあと思ったかもしれない。でも二時間ちょっとという時間で笑ったり泣いたりして、ちょっとだけ暖かい気持ちになれるって、まさにこの映画そのものじゃないかなあ。三谷さんも常々「劇場を後にしたら何も残らないような作品を作りたい」って言ってる事だしね。ほんと、大好きです、この映画。