#11「白夜の果て」

白夜行 完全版 DVD-BOX

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いやあ…。「そう来たか!」って感じです。見事な締めくくりだったんじゃないでしょうか。原作では雪穂が死にそうな亮司を見ないフリして立ち去る、って感じで終わりなんですよね、確か(記憶が不鮮明で…すいません)。ドラマ版だと最後雪穂も自首しちゃうのかな?と思わせておいて、亮司の為に頑なに嘘を突き通し、真実を誰にも言えず、全てを失って一人で生きていかなければならない…。これ、地獄だよね。途中あまりにも非道な二人の行いに、「これで純愛とか言われても…」って引いたとこもあったけど、最終的にはきっちりと彼らに罰を下しているところ、とても良かったと思います。そしてそれだけでは重すぎるけど、原作とは違って典子に亮司の子供を産ませた事で、「自分の遺伝子は残してはいけないのだ」と思っていた亮司や、雪穂の「太陽の下で亮司と手を繋ぎたい」という願いに、少しだけ希望が持てるようになっていたのも、優しさを感じました。私は正直、評判のいい原作はいまいちピンと来なかったので、むしろこのドラマ版の方が出来がいいような気がします。森下さん、ドラマ版「セカチュー」も良かったけど、今回も素晴らしい脚本でした。そしてその脚本を最大限生かしてくれた演出にも拍手。特にラストシーン、ベンチで亮司の子供の手に触れる雪穂を、後ろ姿だけで表情は一切映さないところは良かった。最後の最後で、「主人公の心理描写は一切なし」という原作のスタイルを踏襲しているようで。

もちろんキャストも皆好演で。歩道橋の笹垣と亮司は、ほんとに鬼気迫ってたなあ。武田鉄矢の熱演っぷりは、「金八先生」の第一第二シリーズの頃を思い出しましたよ。あの頃の鉄矢も、全身全霊で演技してたからね。彼の存在が、このドラマを終始引っ張ってくれていたように思います。山田君は元々上手い子だったけど、この作品は大きな転機になったんじゃないかなあ。私生活であんな事があって、普通アイドル俳優だったら、脚本の内容をちょっと変えさせたりしそうなもんだけど、最終回の笹垣の台詞とか、実際の山田君の境遇とかぶりすぎててちょっと凄かった。いい具合に大人の役者に脱皮できるといいですね。はるかちゃんは最初は原作のイメージとかけ離れすぎてるのが気になったけど、この役をキツい雰囲気の女優さんがやったら、それこそ救いようのない雪穂になっちゃってたかもなあ、と思います。最後もちゃんと大人の女に見えてたしね。喪服やドレス姿も綺麗だった。もちろん渡部篤郎八千草薫麻生祐未西田尚美柏原崇といった人達、そして忘れちゃいけない、子役の二人も素晴らしかった。あ、最後に小出君がちょっと出てきたのも嬉しかったな。

内容が重すぎたり家族向けじゃなかったりして、視聴率は苦戦したようですが、私はこのドラマかなり好評価ですね。原作のドラマ化って大抵がっかりする事が多いのに、あの難しい原作を、こんな風にうまくアレンジできるんだ!って、やっぱりドラマ界にもいい人材はたくさんいるんだなーと嬉しくなりました。