「真夜中の弥次さん喜多さん」(ネタバレあり編)

昨日でもう五回見ました。はい、自分でもおかしいと思います。まあ映画館が近所なので、気軽にすぐ行けるってのもあるんですが。ここで五回も見たって書いちゃうと、「そんなに面白いなら」って見に行く人がいるかもしれないんですけど、ほんとに人によって評価が真っ二つの映画なので、ダメでも怒らないでくださいねー。えー、前回ネタバレなしで書いた感想はこちらにあります。んじゃこっから追記にします。むやみに長いです。すいません。









ネットで色々感想見回ってると、「後半失速する」「弥次さん殺されてからが長すぎ」という意見が多いんだよね。恐らくそう感じた人の多くは、原作未読なんだろうな。私は原作であの辺が一番感動したとこだったんで、「ダルい」とか「長い」とかは全く感じませんでした。ただ確かに最初に見た時、各宿のパート毎には面白いんだけど、ちょっとぶつ切りというか、通して見た時の「起承転結」みたいなものがあまりないなあとは思って。でもそれっていつものクドカン映画のパターンなんだよね。前半小ネタやギャグの応酬で飛ばして、後半はシリアスな展開になるんだけど、見てる側はまだ頭が切り替えられなくて、シリアスな話に入り込めない。ギャグが減るので、なんか物足りなさを感じる。ベタなお涙頂戴で、わかりやすく盛り上げたりもしないしね。で、なんか淡々としてるうちに、肩すかしみたいなオチで「え、これで終わり?」っていう。

だから大抵一度目は小ネタに気を取られて、シリアスな部分が邪魔に思えるんだけど、二度三度と見ると、ようやく深い部分が見えてくるんですよね。「木更津キャッツアイ」(ドラマ版)がなぜあれだけ評価されたかっていうと、最終回の終わり方が、クドカンにしては珍しくきっちりしてるせいだと思うんですよ。その代わり映画版は、弥次喜多とまるっきり同じような展開の仕方で、評判悪いでしょ。終わり良ければ…じゃないけど、最後にスッキリして終わるかどうかって、その作品の印象を決める上で大きいんだなあと。ドラマだとあんなに構成の良さが光るのに、映画だとなぜかその辺がイマイチなんだよね(わざとかもしれないけど)。でもそれ以外の部分は物凄く惹かれるものがあるので、取り憑かれたように何回も見に行ってしまうんですが。

私がクドカン脚本を好きなのは、まず笑いのツボが合うところ。同世代だし(三歳違いは同世代って事にしといて)、若い頃好きだったものなんかが似てるので、小ネタのヒット率がかなり高い。「ソノシート」とか、二十代は知らないよね。あとこの映画は「恋愛映画」でもあると思うんですが、結構恋愛観も似てると思うのよね。あんまドロドロしたのは苦手で、もちろん相手といる時は一途なんだけど、あんま独占欲はない感じ。恋愛というより、友情とか人間愛みたいなものに近いというか。ま、子供だから大人の恋愛が苦手って事か。お初のくだりとか、「そんな簡単に許せるかよっ!」って白ける女性もいるかもしれないですね。でも私はなんか共感できちゃうんだよなー。喜多さんに殺されても全く恨んでない弥次さんにも、「だったら私も恨んでないよ。」っていうお初にも。共感というか、「こうありたい」って感じですかね。クドカンのそういうとこが好き。

何がリアルで何が幻想なのか、物語が多重構造になってるんで、考えれば考えるほどわからなくなってくるんですよね。最後は散々喜多さんを諫めてた弥次さんが、キノコ食ってバッドトリップしちゃうし。最初見た時はまたバイクでお伊勢さんに向かって終わり、だと思ってたんだけど、もしかしてあれも現実ではないのか?というかそもそも全部が喜多さんの夢なのか?んー、なんか何回も見過ぎて、ワケわかんなくなってるかも。語れと言われればいくらでも語れるんですけど、とりあえずキャスト毎にコメントしてみましょうか。

長瀬智也…五回見に行った原動力の半分くらいは、彼のちょんまげを見る為…。熱血おバカキャラは虎児とも似てるようだけど、やっぱり全然違う。「喜多さんのバカバカバカ!」とか、「痛くしてごめんなぁ」とか、「おいらのも引っ張ってみるかい?」とか、弱気な弥次さんがツボ。涙目になるとこが結構あって、目の綺麗さにも惚れ惚れ。細くて長い手足にも惚れ惚れ。リアクションの演技はいちいち秀逸。喜多さんとお幸ちゃんにヤキモチ焼くとことか、最高っしょ。

中村七之助…正直あまり好きな顔じゃないと思っていたんだけど、喜多さんはマジでかわいい。何回も見ると、芝居が上手いなーってほんとに感心します。彼がいなけりゃ、この映画成立してないよね。弥次さんに甘えたりするとこが凄く自然で、気持ち悪く見えないのは、普段女形もやってるせいかな。でもお幸ちゃんとのシーンになると、急に「男の子」になるんだよね。ちょっとドキっとした。

小池栄子…凄い迫力でした。怖かった。弥次さんと格闘してるとこの、「いやだー!いやだー!」って叫び声の、カンに触る事といったら!そしてあのデカい長瀬君を、軽々と振り回してぶっとばして。包丁が刺さった後の、見開いた目も怖かったなあ。音響がいい映画館だと、雷の音が凄いんですよ。あそこのモノクロは効果的ですよね。

生瀬勝久…「まゆ毛が一番臭い」はアドリブだそうです。ミュージカルシーンで、生瀬さん達も後ろでちゃんと踊ってるのね。三回目にして気づきました。

寺島進…ヘルメットにちゃんとちょんまげがついてるのがカワイイ。あと電車追いかけて来る時の走り方もカワイイっす。

阿部サダヲ…「銀ちゃん」風間杜夫のパクリ?この人は安心して見てられますね。彼が全編に渡って出てる事によって、かろうじて各宿場の繋がりが出来てるって感じ。喜び組の検死の小芝居と、「うっかりじゃあしょうがねえよぉ〜!」が好き。呑々にキレられて、おどおどしてるとこも好き。

柄本佑…ネタにされてましたけど、意外と背高いんだねー。伸びたのかな。歌の宿で怖くなっちゃって、金々のしっぽ(セカンドバッグについてる毛皮のやつ)に顔埋めてるのがかわいいい!なんかまだ演技に照れがあるというか、ちょっと目が泳いでるようなとこがあって、ハイテンションなサダヲとのコンビが生きてる感じ。

磯山晶…磯Pがどこに出てたかわからなかった人も多いと思うので、ネタばらし。箱根に着く前に、「お二人さん仲がよろしいのねえ。」と声をかけ、弥次さんに担がれてた町娘です。

おぎやはぎ…普段バラエティ全く見ないので、彼らの持ちネタとか知らないんですよねー。周りのお客さんが妙に受けてたので、ちょっと口惜しい。

板尾創路…この役は、目が笑ってない板尾ならでは!子供残してヤク中の末死んじゃうなんて、かなりブラックですよねえ。この映画、板尾の面白さとか哀しさがわかるかどうか、ってのがある意味リトマス試験紙かも。

竹内力…物凄く久しぶりに見たんですけど、太ったね…。別人のよう。箱根の関所パート2でのハジケっぷりがグレイト。

大森南朋…意外なチョイ役。見た人も忘れてそう。

古田新太…まさに出オチ。原作読んでたんで、なんとなく次郎長かなとは思ってたんですけど、そう来たかー。いつ見ても、お客さんが一番笑ってるのはここです。

松尾スズキ…セリフないんですよね。ガクランのロボットダンスがウケました。

山口智充…コントっぽいキャラがかっちりハマるし、芸達者だから、クドカンお気に入りなんでしょうかね。髪洗ってるとこが一番笑った。

清水ゆみ…ブローネのほっぺ赤い子だったのかー!モデルっていう割には、垢抜けない感じの子だなあとは思ってたんだけど(そこがいいんですよね)。歌を下手に歌うのって、案外難しいよね。

楳図かずお…意外とまともに演技してて驚き。衣装はもちろんボーダーです。

中村勘九郎…私は前もって写真見ちゃってたからなあ。知らなかった人は、かなり衝撃受けてたみたいです。最後に近鉄の帽子かぶってたけど、何か意味あるのかな?(「タイガー&ドラゴン」でも良々がかぶってた)

ARATA…生え際の後退が気になったりはしましたが、声が凄くいいですね。あの声で眠くなった人もいたかもしれないけど。あと異様に頭が小さくて手足が長い!結構笑えるセリフ言ってるのに、場内シーンとしてるのがちと悲しかった。

麻生久美子…相変わらず顔はあまり好きじゃないけど、体は最高っすね。カクテル飲まされる時の、「ん…やだ…」ってのが色っぽい。

妻夫木聡…登場した時の場内どよめき率NO.1。気づかなかったって人も多いらしいですが。私も最初は、アップになるまで気づきませんでした。キャラ的にはリトル山田と近いな。

荒川良々…これも受け付けない人にとっては地獄だろうなー。私は「ルール違反、ルール違反」だけでご飯三杯イケるクチですが。「からあげ頼んだ人〜?」ってスルーされまくりの小芝居とか、「人として」のカラオケ(ビデオの映像も良々)とか、細かいとこまで楽しめます。良々って上半身はたるんでるけど、足長くて細いよね。あと頭が小さい。なんかそれが余計に、フリークス感を醸し出してるというか…。

研ナオコ…原作の奪衣婆は豊満で豪快なオバサンだけど、飄々とした映画版もなかなか良かった。喜多さんに「お前はヤク中だから」とか研ナオコが言うのって、OKなんでしょうか…。(昔の事件知ってる人自体もう少ないか)


結局クドカンが好きなので、何やってもオッケーなのかもしれない。でも全部の作品が好きってわけでもないしなあ。そう考えると、私がハマるクドカンものって、ジャニ主演ばっかりなんですよ。いつもここ読んでる方はご存じでしょうが、私は特別ジャニーズ好きじゃないんですけどねえ。多分演出との相性がいいんだろうな。