「深紅」(ネタバレあり)

深紅 [DVD]

深紅 [DVD]

この映画を見に行った動機は、「野沢尚原作・脚本だから」が三割、「塚本君が出てるから」が三割、「近くの映画館でやっていたから」が三割(アバウト・ラブは新宿まで行かなきゃいけないので却下しちゃった)、あとの一割は「『春の雪』の予告編が見られるかもしれないから」ですかねえ。「深紅」東映なので、東宝の「春の雪」はやはり流れませんでしたよ。ちぇ。行く前にネットでざざっと感想を読んだところ、予想通りあまり評判がよろしくないようなので、はっきり言ってこの映画には全然期待してませんでした。原作も読んでいたので、塚本君の役はほとんど出番もないだろうなーっていうのもわかってたし。それがかえって良かったのか、「思ったよりは」面白かったです。先に原作を読んでおいたのは、補完しながら見られて正解だったなー。やっぱり私、野沢さんの作品好きだしね。ただ100%塚本君目当てという方には、お勧めできないです。野沢尚内山理名水川あさみ堀北真希ファンなら楽しめるんじゃないでしょうか。おっと、ここから先はネタバレですので注意。







野沢さん自身が脚本を書いているこの作品、原作とはラストが少し違っています。私、原作のラストはちょっと物足りなかったんですよね。だから実は未歩が奏子の正体を知っていたっていうどんでん返しは、いい脚色だなと思いました。「未歩はいつその事を知ったんだろう?」って、見終わった後も色々考えちゃうしね。「最初から知ってて仕組んだ説」だと、原作とは全く違う話になっちゃう気がするので、私は明良殺しを提案した後、或いは決行した後に気付いたと思う、というか思いたい。ちなみに「両親と弟妹が惨殺され、修学旅行に行っていた長女だけが助かった」っていうのは、練馬一家5人殺し事件という実際あった事件がモチーフですね。ちょっと「眠れる森」にも似てるかな。

なんかねえ、脚本はいいと思うんだけど、どうも演出がまずい気が…。設定は凄くいいんだから、もっとうまく映像化できたんじゃないのかなあ。冒頭のタクシー乗ってるシーンとか、未歩と奏子が夕陽を見ながら話すシーンとか、あまりにも合成がバレバレで、むちゃくちゃ安っぽくてかなり萎えました。あと無意味にカメラがぐるぐる回るのも、公園でストーキングしてる奏子が木の陰に消えるのも、殺人シーンでモノクロになるのも、なんか古くさいというか、正直ダサい。何より私が一番許せなかったのが、あじゃの腹話術人形!出てくるたびサムすぎて、身も心も凍り付いたわよ!あれを面白いと思えるセンスって一体…。あじゃが気の毒だよー。

えーと、じゃあとりあえずキャスト一人ずつ語っていきます。まず内山理名ちゃん。普段から表情が硬いというか、こわばったような顔をしてる彼女、これが案外「殺人事件の生き残りという過去を隠して生きてる」という役には合ってたかも。安めぐみが「かわいい子はいいよねー。」って言った時には、「あんたの方がかわいいよ!」って叫びそうになったけどね。水川あさみちゃんは、まさにドンピシャ。あのDVが似合いすぎる薄幸そうな顔、ポストキムタエと呼びたいです。主役の二人は結構イメージ通りな気はするんだけど、いかんせん地味すぎて華がないのがなあ…。あのショボい合成といい、制作費少なかったのかなあなんて、悲しくなってきます。堀北真希ちゃんは高校生なのに小学生役?と思いましたが、回想で中学生の時もやっていたし、それほど不自然には感じませんでした。家族の遺体と対面するところ、頭を叩き潰されていた為、奏子が布越しに頭部が極端に小さい事に気づくとことか、映画だとわかりにくかったなー。

次に塚本君ですが、原作でも彼の出番=濡れ場って感じで、正直あまり本筋には関係ない役なのよね。緊張が続く物語の中の、箸休め的存在というか。8年経って、奏子がセックスする大人の女になったって事を表したかったのかな。ちなみに拓巳とのセックスで、全く感じてはいない奏子なんですが。内山さんが濡れ場をやるつもりがないみたいなので、この役はほんとに必要なかったかと…。もうちょっと色っぽいシーンあっても良かったんじゃないですかねえ。事後にしっかり洋服着込んで寝てるのも変だったし。役がしょーもないのも悲しかったですが、塚本君のルックスもあんまイケてなくて残念でした。なんか妙に鼻の穴が目立ってなかった?未歩の夫、明良役の内田朝陽君は、今まで真面目な好青年役しか見たことなかったんだけど、意外とチンピラもハマってた。そういやこのカップル、「漂流教室」で現代に残っちゃった二人だね。

一番印象に残ったのは緒形直人かなあ。私同い年なんだけど、実は昔ちょっと好きだったんだよね。筒井君もそうだけど、今だったら妻夫木君がやりそうな、優柔不断な好青年役をよくやってたでしょ?それがいつの間にか、お父さんに近づいてるじゃないのー!あの直人がこんな狂気の目をするなんて!ただせっかく彼が好演してるのに、都築があそこまで思い詰めるまでの課程が、ちょっと描写不足だった気がしないでもないです。小日向さんはあんな小さい子供がいるにしては、年取りすぎかなという気もしたけど、底意地の悪そうなオヤジっぷりがハマってた。

うーん、こうして見ると、キャストもなかなか悪くないのに、やっぱり演出が一番問題かなあ。もっとホラー色を強くしても良かったんじゃないですかね。せっかくドラマじゃなくて映画なんだから、15禁とかでももうちょっと過激さが欲しかったかな。